なんでも作れる時代がやってきた!
家に帰って、レストランのキッチンで働く妹と話していた。調理方法のメモを取ったり、コースを考えたりするために、こんなアプリが欲しい、あんなアプリが欲しいという話になった。
そこからイメージに近い写真を集め、Xcodeを入れ、iPhoneにビルドして、App Storeの審査に出す。昔だったら2か月かかっていた作業が、2時間で終わる。
なんでもできる、楽しい時代がやってきた。
ハードウェアの制御だって、アルミ削り出しのプロダクトだって、板金の外注だって、Astraに触らせて、最後に図面にする。Blenderを触らせる。喋りかけて、Onshapeに形を落とし込む。それをプレゼン資料にする。基板はJLCPCBで発注する。そこには、本当に大したハードルがなくなってきている。
多分このnoteも、読んだ人が何かを作るときのコストを下げることに、少しは貢献できる。
うちの会社は、日曜日を、一週間溜め込んだアイデアを形にする日にしている。月曜日から土曜日まで、思いついたタイミングでやりたいことをストックしていく。日曜日には大体100個くらいのタスクになっている。でも、それを日曜日の一日だけでかなり進めることができる。ソニーの放課後みたいな雰囲気のある日だ。
例えば、今サイドで転がしているのは、ストラディバリウスの材料組成を分析して、3Dプリントの素材に落とし込み、バイオリンとしてプリントして、実際に演奏できるようにする。ディスクのUIとジャイロスコープを使ったSNS。それから、さらには、スマホを直接ドッキングできる、アルミ削り出しのエレキギター。母の作る料理のレシピを家族で共有するアプリ。あとは、スマホの画面の中に水を再現して、ジャイロスコープで動かすアプリ。それから、ローカルネットワークでつないで、遅延なしでハモれる電話。とにかく1日でいろんなものを作る。
普段、いろんなものやいろんな人に触れる中で、こういうものがあったら面白いんじゃないか、自分が使うんじゃないかと思う。それをメモしておくと、AIが勝手に実現可能性を調べる。というか、探索を行ってくれる。アプリも楽器も、まずはそれで進めてみる。
そうは言ってもたくさんの注文がなければ作れなかったものがあるだろうと言われることも多い。僕たちが使っている多くの製品は、そのものを作る前に、その製品を安く作るための機械やラインを用意しなければいけない。その設備を何個の商品で回収するのか、という話になるから、最初からある程度の数が必要になる。
でも、今まで量産でしか作れなかったものも、ロボットとシミュレーションを使えば、ロット数とコストの関係が崩れる。
私はいつもサラダを作るので例える。このたとえは、いつも社内では微妙な反応をされるのだけれど。
レタスをちぎり、そこにきゅうりを乗せ、トマトを乗せ、豆を乗せ、生ハムを乗せて、最後にドレッシングをかける。まず人間が作業を分担する。そこから、コストがかかっていたり、品質を揃えたかったりする部分を、その作業に特化した機械に置き換えていく。ドレッシングだけをかける機械、パッケージングをする機械、という具合だ。
工場といえば、そういうライン工場を思い浮かべる。
6軸ロボットとシミュレーションが可能にするのは、何千回もシミュレーションして、それぞれの作業を覚えた汎用ロボットを組み合わせることだ。レタスを扱う、きゅうりを乗せる、ドレッシングをかける。その動作を覚えたロボットが複数いて、ロボットの間を台車が動く。
工場を組み替えることなく、新しい設備を一式作ることなく、ロット数に応じてスケールしていく。ロボットを1台足せば、生産量が2倍、3倍になる。
最初は1台のロボットが、6皿のサラダを担当する。生産量が増えたら、2台にして3皿ずつにする。さらに増えたら、6台にして1皿ずつにする。
サラダを6皿作るために、最初からレタス専用、きゅうり専用、ドレッシング専用の機械を全部揃える必要がない。1台で始めて、注文が増えたら同じロボットを足す。別の商品を作るときも、覚えた動作や道具を使いながら、組み合わせを変えていく。
もちろん、大量に同じものを作るために最適化されたラインと比べれば、一見、効率が悪く見えるかもしれない。でも、1個あたりの生産にかかるコストは、5分の1や10分の1になっていく。
アプリで起きていることが、家電や、自分の身体より大きなものを作るところにまで広がっていく。ものを作るためのコストが、日に日に下がっていく。
だから、生活に対して感度があったり、何か新しいものを作ってみたいという動機があったりすれば、あとはそれをAIにああだこうだ喋る、というのが私たちの仕事になっていくと思う。
そして、それをどうやって誰かが欲しいものに落とし込むか。自分が面白がって作ったものを、実際に欲しいと思ってもらえるか。
欲しいものに落とし込めて、買ってもらえれば、それが次の制作の燃料になる。このサイクルを回すことが、うちの会社の使命だと思っている。工業というものの意味が、変わってきている。
FLOORのチームは感度を大切にしていて、サプライのコストはゼロに近づいていく。だからこそ、暮らしが半歩先に進むようなものを作りたい。
おもちゃや遊びのように見えるかもしれないけれど、いつの間にかそれを使って、家での過ごし方や行動が変わってしまう。そんなふうに幸せになってしまうような、ものづくりをやっていきたい。